最近どんなことをしているか聞かせてよ
2012.04.16 |Category …研究のこと
先週の水曜日にリヨンに来て、Brunoさんの部屋におじゃましたら、
さっそくこう聞かれました。さあ、サイエンティフィックな話を始めようよ、ということです。
このあいさつに表われるように、こちらには科学を楽しむ雰囲気があります。
自分の出した成果、新しい発見について話し、議論する。面白いでしょ、という
おだやかな感じで話をしてくれます。データの扱いやロジックに厳密さがあるのは当然で
気負いはありません。まだ十分に理解できていないところも、どう認識していけばいいか、
いろんな情報を引き出しながら、今分かっていることはここまでだね、とスパリ。
論文に書くようなことをさらさらと日常的に話しているようですね。
たぶん、何度も同じような話をするのかも。そうやって日頃からアイデアを醸成して、
情報交換しているうちにコミュニティーとしての認識もできていくんでしょう。
今はイリノイ大学のJay BassさんがPhDの学生さん(Jin)と実験のために来られています。
バカンスシーズンということもありますが、オフィスにいる間、ずっと科学に浸っている感じ。
サイエンスを仕事にしている、きれいな空気が流れています。
ふとBrunoさんの机を見ると、日本語の論文が。
液体の金属の中でのNi、Vなどいろんな元素の拡散速度を決めた実験のようです。
日本になじみのある方とは言え、日本語で書かれている論文からもさらりと情報をとる
姿勢に感銘を受けました。私がフランス語の論文を読むよりも壁が高いように思うのですが。
すべてに力みがなく、さらりとこなしていくのが、本当に印象的です。
さっそくこう聞かれました。さあ、サイエンティフィックな話を始めようよ、ということです。
このあいさつに表われるように、こちらには科学を楽しむ雰囲気があります。
自分の出した成果、新しい発見について話し、議論する。面白いでしょ、という
おだやかな感じで話をしてくれます。データの扱いやロジックに厳密さがあるのは当然で
気負いはありません。まだ十分に理解できていないところも、どう認識していけばいいか、
いろんな情報を引き出しながら、今分かっていることはここまでだね、とスパリ。
論文に書くようなことをさらさらと日常的に話しているようですね。
たぶん、何度も同じような話をするのかも。そうやって日頃からアイデアを醸成して、
情報交換しているうちにコミュニティーとしての認識もできていくんでしょう。
今はイリノイ大学のJay BassさんがPhDの学生さん(Jin)と実験のために来られています。
バカンスシーズンということもありますが、オフィスにいる間、ずっと科学に浸っている感じ。
サイエンスを仕事にしている、きれいな空気が流れています。
ふとBrunoさんの机を見ると、日本語の論文が。
液体の金属の中でのNi、Vなどいろんな元素の拡散速度を決めた実験のようです。
日本になじみのある方とは言え、日本語で書かれている論文からもさらりと情報をとる
姿勢に感銘を受けました。私がフランス語の論文を読むよりも壁が高いように思うのですが。
すべてに力みがなく、さらりとこなしていくのが、本当に印象的です。
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FIB
2012.04.15 |Category …研究のこと
リヨン大学 Ecole Normale Supérieure de Lyonの
Bruno Reynardさんのところにおじゃましています。
いろいろと装置を見せていただいて、それぞれ印象的だったのですが、
FIB-SEM systemには衝撃を受けました。FIBはFocused Ion Beamの略。
顕微鏡などの観察で見定めた面白いところを、透過顕微鏡観察するために、
数100nmくらいの厚さの板を切り出す、という作業ができる装置です。
この薄さもおどろきですが、OK、そこまでは想像できる範囲です。
リヨン大では新しいFIB技術の開発も進められています。
FIBで加工に使うのはGaイオンです。試料にGaイオンをぶつけて
削っていくんですね。電子線のように狙った位置に照射できるので、
試料表面を薄皮一枚はがすことができます。3nmステップではがす
ことができるんだそうです。はがしては表面をSEMのオプションで
分析、はがしては分析、そうやって得た像を3D加工すると立体像が
出来上がります。
リヨン大の装置にはEDS、EBSD、BSEがついているので、
化学組成や結晶方位、穴の3次元像が、3nmの解像度で得ることが
できます。結晶の中に入っている1ミクロンくらいの不純物の形を
精巧に描き出すことができるのです。まるで結晶標本を見ているようです。
しかも結晶方位が分かるので面を決めることもできます。
ちょうど見学させていただいたときにPhDの学生さんが分析をしていました。
EBSDとFIBを組み合わせて何ができるか、が研究テーマなのだそうです。
こういったテーマをみんなが認めてサポートするからこそ技術が進歩する
のだろうと思います。
この装置の制御プログラムまで書いてしまうという、
Bertrand Van de Moorteleさん。こういう人が身近にいてくれたら。

Bruno Reynardさんのところにおじゃましています。
いろいろと装置を見せていただいて、それぞれ印象的だったのですが、
FIB-SEM systemには衝撃を受けました。FIBはFocused Ion Beamの略。
顕微鏡などの観察で見定めた面白いところを、透過顕微鏡観察するために、
数100nmくらいの厚さの板を切り出す、という作業ができる装置です。
この薄さもおどろきですが、OK、そこまでは想像できる範囲です。
リヨン大では新しいFIB技術の開発も進められています。
FIBで加工に使うのはGaイオンです。試料にGaイオンをぶつけて
削っていくんですね。電子線のように狙った位置に照射できるので、
試料表面を薄皮一枚はがすことができます。3nmステップではがす
ことができるんだそうです。はがしては表面をSEMのオプションで
分析、はがしては分析、そうやって得た像を3D加工すると立体像が
出来上がります。
リヨン大の装置にはEDS、EBSD、BSEがついているので、
化学組成や結晶方位、穴の3次元像が、3nmの解像度で得ることが
できます。結晶の中に入っている1ミクロンくらいの不純物の形を
精巧に描き出すことができるのです。まるで結晶標本を見ているようです。
しかも結晶方位が分かるので面を決めることもできます。
ちょうど見学させていただいたときにPhDの学生さんが分析をしていました。
EBSDとFIBを組み合わせて何ができるか、が研究テーマなのだそうです。
こういったテーマをみんなが認めてサポートするからこそ技術が進歩する
のだろうと思います。
この装置の制御プログラムまで書いてしまうという、
Bertrand Van de Moorteleさん。こういう人が身近にいてくれたら。
鉱物はどうやって並ぶ?
2012.04.07 |Category …研究のこと
フランスへ来て1カ月も経つのに何のためにこちらへ来ているかを書いていませんでした。
この2ヵ月の滞在は金沢大学地球学コースの荒井教授を代表者とした若手派遣プロジェクト、
「海洋地殻―マントルの構成と発達過程の解明:モホールへの備え」にサポートしていただいています。
海洋プレートを理解しよう、というとき様々な見方ができます。
岩石の種類、化学組成、マグマプロセス、水と岩石の反応。。。
そして、「変形構造」という視点で、海洋プレートとその下のアセノスフェアとの関係も含めて
考えよう、というのが私の立場です。
マントルの主成分であり、かんらん石が作る「変形構造」が最も注目されるところです。
地震波で観測される弾性的な構造や流動特性に最も影響を及ぼすからです。
鉱物であるかんらん石の並び方は温度や水、メルトの存在によって変化することが
分かってきています。しかし、そのパターンにはいろいろとあり、メカニズムは十分に
説明されていません。最近の実験から、マントルの変形ではあまり考慮されてこなかった
メカニズムの重要性が指摘されています。
ざっというと、流体が存在するときにかんらん石結晶がどう振る舞うか、が問題です。
例えば、メルトがあると考えられているアセノスフェアではどのように結晶が配列するか。
沈み込み境界の水の存在するところでは、どのような構造が発達するか。そして、その
変形のメカニズムと流動則はどのようなものか。そういった問題に取り組もう、というのが
今回の目的です。
私がお邪魔しているモンペリエ大テクトノフィジクスグループは、結晶方位解析の専門家が
集まっています。EBSDシステムを世界に先駆けて立ち上げ、鉱物の配列と地震波速度を
リンクさせる研究スタイルの礎を作ったDavid Mainpriceさん、メルトの存在下で変形した
岩石ならこの人、というAndrea Tommasiさん、大陸リソスフェアの構造解析で数多くの
成果を出しているAlain Vauchezさん、そして、ユニバーサルステージを駆使して、
オフィオライトの結晶方位解析を多数報告したFranciose Boudierさんも健在です。
オフィオライトと言えば最初に名前が浮かぶAdorphe Nicolasさんはまだまだ著書を増やして
おられます。モホール計画で日本ともなじみの深いBenoit Ildefonseさんは構造解析と地球
化学を組み合わせた研究スタイルです。
何度もNatureに論文を出されている、私からすると恐れ多い方々のそばで、
FE-SEM-EBSDシステムをスケジュールの半分くらい使わせていただくという、
贅沢をさせていただいています。タイミングを見計らって薄片やデータを見て、
議論もしてもらっています。
この機会を日仏双方にとって有意義なものにするためにも、慎重にデータを吟味し、
石の中に隠れた情報を引き出していきたいと思っています。その見通しが立つまでは
なかなか観光気分になれない、というのが正直なところです。
モンペリエという街そのものが観光地なのですが。
この2ヵ月の滞在は金沢大学地球学コースの荒井教授を代表者とした若手派遣プロジェクト、
「海洋地殻―マントルの構成と発達過程の解明:モホールへの備え」にサポートしていただいています。
海洋プレートを理解しよう、というとき様々な見方ができます。
岩石の種類、化学組成、マグマプロセス、水と岩石の反応。。。
そして、「変形構造」という視点で、海洋プレートとその下のアセノスフェアとの関係も含めて
考えよう、というのが私の立場です。
マントルの主成分であり、かんらん石が作る「変形構造」が最も注目されるところです。
地震波で観測される弾性的な構造や流動特性に最も影響を及ぼすからです。
鉱物であるかんらん石の並び方は温度や水、メルトの存在によって変化することが
分かってきています。しかし、そのパターンにはいろいろとあり、メカニズムは十分に
説明されていません。最近の実験から、マントルの変形ではあまり考慮されてこなかった
メカニズムの重要性が指摘されています。
ざっというと、流体が存在するときにかんらん石結晶がどう振る舞うか、が問題です。
例えば、メルトがあると考えられているアセノスフェアではどのように結晶が配列するか。
沈み込み境界の水の存在するところでは、どのような構造が発達するか。そして、その
変形のメカニズムと流動則はどのようなものか。そういった問題に取り組もう、というのが
今回の目的です。
私がお邪魔しているモンペリエ大テクトノフィジクスグループは、結晶方位解析の専門家が
集まっています。EBSDシステムを世界に先駆けて立ち上げ、鉱物の配列と地震波速度を
リンクさせる研究スタイルの礎を作ったDavid Mainpriceさん、メルトの存在下で変形した
岩石ならこの人、というAndrea Tommasiさん、大陸リソスフェアの構造解析で数多くの
成果を出しているAlain Vauchezさん、そして、ユニバーサルステージを駆使して、
オフィオライトの結晶方位解析を多数報告したFranciose Boudierさんも健在です。
オフィオライトと言えば最初に名前が浮かぶAdorphe Nicolasさんはまだまだ著書を増やして
おられます。モホール計画で日本ともなじみの深いBenoit Ildefonseさんは構造解析と地球
化学を組み合わせた研究スタイルです。
何度もNatureに論文を出されている、私からすると恐れ多い方々のそばで、
FE-SEM-EBSDシステムをスケジュールの半分くらい使わせていただくという、
贅沢をさせていただいています。タイミングを見計らって薄片やデータを見て、
議論もしてもらっています。
この機会を日仏双方にとって有意義なものにするためにも、慎重にデータを吟味し、
石の中に隠れた情報を引き出していきたいと思っています。その見通しが立つまでは
なかなか観光気分になれない、というのが正直なところです。
モンペリエという街そのものが観光地なのですが。
モホール申請
2012.04.03 |Category …研究のこと
4月1日、ついにMohole計画の申請書がIODPへ提出されました。
モンペリエ大でお世話になっているグループのディレクターをされている
Benoit Ildefonseさんは申請研究者のリーダー的存在。
ずっと厳しい顔をされていましたが、表情が心なしかリラックスして見えます。
申請締切の4週間前に提出の形式が変わり、準備していた書類の再構成を
することになったため、内容の再吟味が必要になったのだそうです。
申請者で意見を調整し、何度も原稿を見直して、ようやく日曜日に図や原稿をウェブ申請できたとのことです。
4月1日、Mohole計画が提出された記念すべき日に掘削船「ちきゅう」が
清水港から出航しました。この偶然の一致にBenoitさんは感動していました。
静岡大の道林さんが撮影された写真がモホール掘削ウェブにアップされています。
富士を背に船出する「ちきゅう」の雄姿、モホール計画の船出を象徴しているようです。
モホール計画申請について森下さんもブログに書かれています。
モンペリエ大でお世話になっているグループのディレクターをされている
Benoit Ildefonseさんは申請研究者のリーダー的存在。
ずっと厳しい顔をされていましたが、表情が心なしかリラックスして見えます。
申請締切の4週間前に提出の形式が変わり、準備していた書類の再構成を
することになったため、内容の再吟味が必要になったのだそうです。
申請者で意見を調整し、何度も原稿を見直して、ようやく日曜日に図や原稿をウェブ申請できたとのことです。
4月1日、Mohole計画が提出された記念すべき日に掘削船「ちきゅう」が
清水港から出航しました。この偶然の一致にBenoitさんは感動していました。
静岡大の道林さんが撮影された写真がモホール掘削ウェブにアップされています。
富士を背に船出する「ちきゅう」の雄姿、モホール計画の船出を象徴しているようです。
モホール計画申請について森下さんもブログに書かれています。
傷
2011.12.10 |Category …研究のこと
AGU Fall Meeting最終日。
ふらりと立ち寄った会場に日本の「地殻流体」グループの方々がおられて
森下さんのコネで懇親会に参加させていただきました。
東北大の中村さん、松澤さんのお隣に座ってお話ししているうちに、
東日本太平洋沖地震の自然と話になっていきました。
東北大学で地震時に起こったこと。
書籍が足元へ流れるようにたまっていったとか、
重心の高い装置が床への固定していたねじを引きはがしてひっくり返ったとか、
耐震工事の施し方で揺れの大きさが違い、被害におおきな差がでたとか。
そんななかでも、地球科学の教室ではけが人が奇跡的に一人も出なかったこと。
ある小学校での避難の様子。わずかな判断が生死を分けたこと。
松澤さんの言葉に地震の専門家としてのはがゆい思いがにじんでいました。
発言する責任のある立場にあって力が及ばなかった、と自責されています。
その一方で、何が起こったかを完全に理解して、新しいプレート境界像を
確立せねば、と強い意志をもって話しておられました。
被災地の方々が受けた衝撃を、初めて直接に聞いて、その傷の深さが
想像の及ばないくらい大きいのだ、とあらためて感じます。
その分だけ、この思い・経験を伝えて、未来に向かっていくのだという
エネルギーが、私たちより格段に強いということも感じます。
横に座って聞いているだけで、熱い思いが私の中にも湧き上がってきました。
何かせねば。
ふらりと立ち寄った会場に日本の「地殻流体」グループの方々がおられて
森下さんのコネで懇親会に参加させていただきました。
東北大の中村さん、松澤さんのお隣に座ってお話ししているうちに、
東日本太平洋沖地震の自然と話になっていきました。
東北大学で地震時に起こったこと。
書籍が足元へ流れるようにたまっていったとか、
重心の高い装置が床への固定していたねじを引きはがしてひっくり返ったとか、
耐震工事の施し方で揺れの大きさが違い、被害におおきな差がでたとか。
そんななかでも、地球科学の教室ではけが人が奇跡的に一人も出なかったこと。
ある小学校での避難の様子。わずかな判断が生死を分けたこと。
松澤さんの言葉に地震の専門家としてのはがゆい思いがにじんでいました。
発言する責任のある立場にあって力が及ばなかった、と自責されています。
その一方で、何が起こったかを完全に理解して、新しいプレート境界像を
確立せねば、と強い意志をもって話しておられました。
被災地の方々が受けた衝撃を、初めて直接に聞いて、その傷の深さが
想像の及ばないくらい大きいのだ、とあらためて感じます。
その分だけ、この思い・経験を伝えて、未来に向かっていくのだという
エネルギーが、私たちより格段に強いということも感じます。
横に座って聞いているだけで、熱い思いが私の中にも湧き上がってきました。
何かせねば。